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契約書についての基礎知識
(1)契約の意味をまず知っておくこと
契約とは当事者同志をお互いに約束事で結びつけることです。当事者が向き合う形で、一方が金を出し、他方が物を渡すという契約(売買契約など)であったり、当事者が皆一つの方向を向 いて協力して一つの事業を成功させるといった契約(組合契約など)もあります。
いずれにしても、契約というのは、当事者同志の権利義務の関係を定めて、各自がそれぞれ何をすべきかを明確にして、決められたことを守ることで、お互いを拘束し合うことです。
■「念書」と契約書はどこが違うか
念書というのは、通常、一方当事者から、もう一方の当事者に交付されるもので、一方からの約束です。 約束という意味での、拘束力はあるのですが、念書に署名した者や、相手に提出した側の者だけが拘束されるという性格のものですから、一方的なことしかわかりません。契約のように、お互いが対等な立場で拘束し合うものではなく、一方的に約束するという性格の書面である点が、もっとも異なるところでしょう。
さらに、念書は通常極めて簡単に、事実関係や、債務の支払い方法などを約するものが多いので、「その念書を作成した」という事実の証明にはなっても、その契約自体が存在していた事実や、念書の事実がどうして生じたのか等、実質的な点は必ずしも十分には証明していません。証明力が極めて限定されている訳です。
従って、念書だけで裁判を起こそうと思っても、そう簡単ではなく、なかなか困難なものがあります。 この点、契約書ならば、合意の存在が書面と署名で確認されており、当事者の権利関係、利害関係、合意内容などがはっきり書面化されており、なぜその様な債務があるのか相当程度はっきりしますので、比較的有利に裁判をすることができるのです。
従って、裁判官も、契約書があると、安心して判断ができると言うことになります。逆に、契約書があるのに、これを否定しようする場合には、大変な困難があるということになります。こうした点でも、念書というのは、まったく異なった証明力になるという認識が大切です。
今述べたのは、実質的なことであり、例えば、単に債務者を欺くためにわざと表題は念書としており実質は金銭消費貸借契約書だったということもありますので、十分注意してください。
■ 公正証書による契約書との違い
公正証書は、債務名義(執行証書)となるという点が、契約書 とのもっとも大きな違いです。契約書だけでは、すぐに強制執行をすることはできません。一度裁判を起こして、勝訴判決を得て、その判決に、強制執行を認めるという趣旨の執行文というものをもらわない限り、強制執行をする力はありません。このように手間暇が掛かるので躊躇している方も多数います。
しかし、公正証書は、強制執行を受けることを前提に作成されますので、公正証書中に、強制執行を受けてもかまいませんという「執行受諾文言」の記載がなされます。この文言がないと通常の契約書のとおり勝訴判決が必要です。
債務者が、こうして、予め、債務不履行の時は強制執行を受けても文句は言いませんと約束し、公証人がそれが正当と認めたので判決の必要はなく公正証書の作成だけで、強制執行の効力が与えられます。
こうした強力なものですから、作成においても極めて厳格に行われます。従って、これが作られるのは、金銭消費貸借契約すなわち借金するとき、不動産売買や不動産を借りるときくらいのものです。
これらの場合は、危険度が高く、強制執行できるようにしておかないと、後で困ったことになることが多いからです。
また離婚の場合の財産分与や、養育費の支払など履行を確保しておきたい場合にも、実行力ある取り決めができるでしょう。
注意として、公正証書にすれば何でもかんでも直ぐに強制執行できるというものではありません。公正証書により債務名義となる要件は、「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」について強制執行ができるということです。
この規定により、通常の金銭の支払を目的とするものは公正証書のメリットを生かすことができますが、不動産の明渡しや離婚する事、騒音を出さないなどの約束事はいくら公正証書にしても直ちに強制執行することはできません。
しかし、一般には契約は、友好的な、対等の場合で行われますので、公正証書を作るというのは、一般の契約書にはなかなかなじまないというのが実際です。
(2) 契約書には何を書くか
契約書を作ろうというときには、本当は弁護士や司法書士、行政書士に相談して、正確なものを作って欲しいのですが、いろいろな事情からそうも言っていられないようです。
そこで、自分で契約書を作るときの留意点を指摘しておきます。
■ その第一は、今から作ろうと思っている契約書の手本になるようなものを探して、よく読むことです。
古いものは、法律が変わっているかも知れませし、問題があるものも多々あります。できるだけ、新しいものを見るのが妥当です。条文がどの様になっているか、どんな書き方をしているか、何が必要な要件か、よく見るとわかってきます。
その上で、自分の事情に合うものはどれか、足りないことは何かと、見ていけばいいのです。文房具屋さんや、本屋さんで、契約書の雛形を売っていますので、一度見てください。
■ よくわからなかったら、あいまいにしないで、迷ったこと、必要と思ったことのすべてを、「特約」として何でも書いておくようにしましょう。
きっと後で役に立ちます。問題となるのは、この条文はこういう意味で書いたのです、とか、こういう約束があったのです、等と後から言う人がいます。こうしたことは、その契約書を作る時にはっきり書いておかなければ、書いていないのと全く同じことです。
契約書にこんなことを書いてはまずいのでは、とか、恥ずかしいのでは、等という余計な心配は全く必要ありません。疑問に思ったり、少しでも気になったこと、心配だと思った点などは、後日かならずと言っていいほど言った言わないの問題になります。
少しでも気になったら、何でも、どんなに小さなことでも結構です。契約書の特約の項目が一杯なら、欄外にでも、余白にでも書いておくことです。ともかく書いておいてください。契約の時のことは、契約書に書いてあることだけが真実で、書いてないことは、認めないのです。重要なものほど、書いてあるはずだ、書いていないのは重要ではないのだ、と後で言われるのです。
重要なことは誰でも書くのが普通だからです。重要なことを書くのは当然のこと、後日問題になるかと危惧を感じたら、些細なことでも書いておきましょう。十分な注意が必要です。
又同様に、契約書が、その条文の文言だけで、一人歩きをはじめてしまいますので、十分に気を付けてください。書面に書いたことは、絶対に変化しません。書面の通りの効果を持ちます。契約したときの人の気持ちは変化するものです。その事を念頭に、証拠として残さなければなりません。
■ 契約書にはすべて記入者自身が自筆で記入すること。
これは当たり前のことですが、契約者が複数の時や、夫婦の時、連帯保証人の部分や、保証人の部分などは、なぜか皆さんいい加減にしています。当事者の一人の人がすべて勝手に記入して、良しとしています。
法的な観点では、考えられないことで、とんでもないことです。
その様な記入はほとんどの場合、無効になります。書いてないのと同じことになるのです。
また、委任状を作ってきたとしても、にわかには信じることはできません。裁判になっても、委任状の偽造と言うことになれば、偽造した人の責任は出てくるにしても、偽造された人、すなわち名前を使われた本人は何の責任も負わないことが多いのです。
従って、どうしても、委任状を使うときは印鑑証明を添付してもらい、かつ、直接委任状の本人(委任者)に電話をして、代理人を使ったか、何を委任したか、当該行為をさせて良いか、等確認するとかが絶対に必要です。電話で確認したときは、その日時に確認した旨を契約書に明記しておけば万全です。
■ 契約書に書くべき最低限の事項
- 当事者・・・・・個人か法人か、本名か
- 契約の目的・・・何がしたいのか、何をさせたいのか
- 契約期間・・・・いつからいつまでの契約か
- 債務の内容・・・いつ、何を、どの様にするか
- ペナルティー・・約束を破った時の制裁
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もしもの為に裁判管轄の合意
遠方の当事者の時に、裁判所も遠方になったのでは費用もかかり問題があるので、近い裁判所に管轄を定めておくこと
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