後見制度支援信託

後見制度支援信託の意義

成年後見事件は,平成12年に成年後見制度が発足してから増加傾向にあり,施行一年目の認容件数は三千件足らずであったが,平成22年には2万3000人を超えている。

当初は,親族を後見人に選任する割合が高かったが,その後,親族以外の第三者専門職後見人が選任される割合が増えていき,平成22年には,専門職後見員の割合が4割を超えるようになった。

将来的にも,高齢者の人口は増加し,認知症高齢者も増加することが考えられ,成年後見制度の利用が上昇することが予測されている。近年,増加する成年後見事件で問題となっている一つとして,後見人により本人財産の不正事案(業務上横領等)の増加が顕著になっていることである。

そこで,親族後見人の不正を防止する観点から,支援信託の運用が検討されるに至った。親族後見人等による不正行為の実情として,平成22年6月から平成23年3月までの10か月の間に,判明した不正行為事案で,182件,判明した被害総額で約18億3000万円であった。この数字は,故意犯によるものである。

 

支援信託の概要

後見制度支援信託は,親族後見人を選任する事案において,日常生活に必要な一定の額を超える現金,預金等については信託銀行との間で信託契約を締結するというものである。

信託契約を締結するまでの間は,職業専門後見人が選任され,同後見人が,本人の財産状況を把握したうえで,本人の将来設計に沿った収支予定を作成し,この予定に沿うような財産が信託契約締結後に後見事務を行う親族後見人の手元にくるような信託条件を設定することが予定されている。

 

後見制度支援信託の信託財産と信託財産の運用

一定の金銭は,預貯金等として後見人の管理下に残し,日常必要な金銭の支払いに支障がないような運用を行う予定である。

信託の対象となる財産は,現金及び預貯金等に限られ,不動産や保険を換金して信託をすることは想定していない。株式など価格変動の大きい金融商品は,換金すること自体に親族との紛争にかる可能性が高いことから望ましいものではなく,本人がペイオフ対策として複数の金融機関の預貯金口座にて分散管理していた場合等,本人の強い意思が推定される場合には,本人の意思を尊重する必要がある。

また,遺言の存在が明らかな場合は,その対象財産も信託の対象とはしない。

信託銀行は,本人の信託財産を合同運用支援信託として,顧客から預かった複数の信託金を合同で運用するとされている。信託財産は,信託銀行等が倒産しても信託財産の独立の原則から安全は守られる。(信託銀行等の債権者も,信託財産に対しては,差し押さえができない。)

1000万円までは元本保証がされる。本人の財産から,管理報酬と運用報酬を信託銀行に支払わなければならない。

 

専門職後見人の関与の仕方

信託条件の設定 ⇒ 信託契約の締結

信託契約は,専門職後見人が締結することとなる。

  1. 複数選任方式 = 親族と共に職業後見人を選任(権限分掌) ⇒ これが原則型
    職業専門職後見人が信託契約を締結した後,辞任をし,後は親族後見人が後見事務を行うこととなる方式。
  2. リレー方式 = 当初は職業後見人だけを選任し,信託契約締結後親族後見人に交代してもらう方式。
  3. 監督人方式 = 親族を選任すると共に職業専門職を後見監督人に選任し,信託契約締結後,職業後見監督人を辞任してもらうという方式。


 

後見制度支援信託を利用できる者

成年後見,未成年後見に限られ,保佐,補助,任意後見には適用しない。


 

後見制度支援信託を利用した場合

後見人が信託した財産を払い戻すためには,家庭裁判所に発行する指示書が必要となるが,日常に必要な金銭,月々の本人の収入を後見人が管理し,収支の赤字が見込まれる場合には信託財産から定期的に送金を受けることから,通常の場合は,後見人が管理してある金銭で賄うことが可能である。

  1. 定期交付・・・収支が赤字の場合,定期的に信託財産から定期的(毎月等)に払い戻される(後見人が管理する預貯金口座へ入金)。
  2. 次の場合には,家庭裁判所の指示書に基づかなければならない。
  • 信託契約の締結
  • 一時金交付(施設入所のためやリフォーム工事代金の支払いなど)
  • 定期交付金額の変更
  • 追加信託(相続が発生したり保険金を受領した場合など)
  • 解約

 

今後について

 全国の各家庭裁判所で運用において,その地域の特性に応じた運用がなされると思われる。まさにこれから運用が開始するため,その運用を見守っていきたい。

 

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