相続についての相談室

Q1、夫が亡くなり、生前掛けていた生命保険金の受取人が、私(妻)と指定されていました。これは相続財産となるのでしょうか?

A1、場合を分けて考えてみましょう。

  1. 夫が被保険者であり、受取人を相続人の中の特定の一人として契約していた場合。
    生命保険金は相続により取得するのではなく、固有の権利として取得することになります。
  2. 受取人を単に相続人としていた場合。
    この場合も①同様、固有の権利であり、相続により取得したものではありません。
  3. 夫が自己を受取人としていた場合。
    相続人が生命保険金を取得しますが、上記と同様、固有の権利として取得します。
  4. 夫が指定していた受取人が夫より先に死亡したが、夫が受取人の変更を行なわなかった場合。
    最初に指定受取人となっていた者の相続人が、やはり固有の権利として取得します。

 

Q2、父が死亡し、妻である私と子である兄弟2人が相続したのですが、兄が父の遺言を密かに隠してしまいました。この場合、遺産分割はどうなるのでしょうか?

A1、まず、民法で定められている相続欠格事由から説明しましょう。

  1. 被相続人または自分より先順位もしくは同順位にある相続人を故意に殺し、または殺そうとしたため刑に処せられたとき(過失致死罪は除く)
  2. 被相続人が殺されたのを知りながら、これを告訴・告発しないとき
  3. 詐欺または強迫によって、被相続人が遺言しようとするのを、または取り消そうとするのを、もしくは変更しようとするのを妨げたとき
  4. 詐欺または強迫によって、被相続人に遺言をさせ、遺言を取り消させ、もしくはこれを変更させたとき
  5. 被相続人の遺言書を偽造したり、変造したり、破棄したり、隠匿したとき

ご質問の場合、⑤に該当することとなりますが、その兄が「いたずら」で隠した場合には該当せず、遺言書の隠匿によって、自己の相続上の地位を有利にし、もしくは不利になるのを妨げるような意思があった場合のみ、相続欠格者となるのです。

欠格者となった場合、相続権はありませんから、その兄を除く妻と弟で遺産分割協議を行なうことが可能です。

 

Q3、私の長女は中学生くらいから非行にはしり、暴力を振るわれたり、勝手に私の財布から現金を持ち逃げしたり、目にあまるものがあります。 そんな子でも相続させなければならないのでしょうか?

A3、現民法では実親子関係を全く切ってしまう方法がありませんが、相続権だけを剥奪する方法として、相続人廃除の手続きがあります。

これは、私人が廃除を宣言しても効力は生じず、家庭裁判所の審判を得て、はじめて廃除の効力が発生します。
廃除事由は、被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他著しい非行となっています。

また相続人廃除は遺言ですることもできます。

なお、一度廃除されても、その被相続人に関するものだけであり、他の者が亡くなり、新たな資格で相続人となった場合にまでは、効果が及びません。

さらに、再度家庭裁判所で廃除の取消も自由にできます。

 

Q4、遺産分割の方法は?

A4、まず遺産分割のやり方ですが

  1. 被相続人が遺産分割の方法を遺言で定めているときは、それによります。
  2. 遺言がない場合は、相続人の協議
  3. 協議ができないときは、家庭裁判所で調停の申立
  4. 調停が不調のときは、審判手続きに移り、家庭裁判所が遺産分割方法を決定する

実際に財産を分ける場合は

  1. 現物分割(現物そのものを相続人間で分け合います。)
  2. 代償分割(ある現物を特定の相続人に与える代わりに、他の相続人が現物を得た相続人から金銭を支払ってもらう。)
  3. 換価分割(現物分割でも代償分割でも難しい場合に、相続財産の一部または全部を売却し、その代金を相続人間で分け合うというものです。)

 

Q5、代償分割による遺産分割協議が成立したのですが、代償金が一向に支払われません。協議を取り消したいのですが...?

A5、遺産分割を無効にし、遺産分割のやり直しを求めることができません。

遺産分割については、通常の債務と違い、債務不履行による解除を認めていません。

理由の第一は、契約解除の趣旨は、相手が債務不履行の場合、債務に拘束されることを免れ、他の新しい契約先を求めることを可能にするところにあるのに、遺産分割の場合には、その必要性がないといえます。

第二に、遺産分割協議は一旦成立すれば、安定的であることが望ましく、特に分割後に相続人が取得財産を第三者に処分するなどしている場合に、後になって、白紙に戻すということは、取引の安全を害してしまうためです。

この場合は調停または訴訟を提起する必要があるでしょう。

しかし、その代償分割が調停、審判で決められていた場合は、その調停調書や審判書は債務名義となり、改めて訴訟を提起するまでもなく、強制執行の手続きをとることができます。

なお、法定解除は上述のとおりできませんが、合意解除は可能です。

 

Q6、父親が亡くなりましたが,生前,借金をしていたみたいです。
  しかし,親元を離れていたため,詳しいことが分かりません。
  借金を調べる方法はあるのでしょうか?

A5、まずは,お父さんの部屋や重要なものをしまっていたと思われる保管場所などを調べる必要があります。

契約書や取引明細書,カードなどが発見される場合もありますし,借入れや返済に関するメモが記載された手帳が見つかることもあります。

預貯金通帳も確認してください。会社名や個人名での入金や出金(引落)を確認するとことも手掛かりを掴む方法です。

次に,郵便物を確認してください。

督促状や利用明細書などが送付されているかもしれません。

また,暫くの間は郵便物に気を留めていただき,死亡後に送られてくる郵便物の確認作業も重要になってきます。

この郵便物の確認と並行して,借入れなどの情報を保有している信用情報機関へ信用情報の開示請求を行います。

 ・株式会社日本信用情報機構(消費者金融系)

 ・株式会社シー・アイ・シー(クレジット会社系)

 ・全国銀行個人信用情報センター(銀行系)

ここまで調べると,全てとはいえませんが,ある程度の借金やクレジット残金の額などの事実が分かってきます。

しかし,ここまで調べても,お父さんの友人など個人からの借入れや保証債務については,明らかにならないこともあります。

相続放棄は,3か月以内という期限があることから,3か月間では調査が不十分な場合には,3か月が経過する前に,家庭裁判所に申立て,期限を伸長してもらう方法もあります。

それと,注意事項として,プラスの財産よりマイナスの財産が多額かどうかの見極めが困難な場合には,預貯金の解約などの手続きをするなど,お父さんの遺産については手を触れないことです。

お父さんのプラス財産を手にすると,3か月が経過していなくても相続放棄ができなくなるため,慎重な対応が必要となります。

なお,お父さんが長年借金を繰り返しており,過払金が発生している場合は,この過払金返還請求権は,相続の対象となりますので,信用情報を確認して取引が長期間に渡っているような場合には,取引履歴を取り寄せて過払金の確認が必要な場合もあります。

 

Q7、相続人の一人がどうも認知症のようですが,どうしたらよいでしょうか?

A5、判断能力が著しく低下している方が相続人の中におられる場合,成年後見人選任の申立てを家庭裁判所に対し行い,選任された成年後見人と共に遺産分割協議を行う必要があります。

この選任手続きを行わずにした遺産分割協議は無効となる可能性が高いため,手続きを踏んだうえで遺産分割協議をする必要があります。

成年後見人選任の申立の際,成年後見人候補者を申立書に記載することが可能ですが,誰を選任するかは裁判所の専権事項ですので,候補者が必ず選任されるとは限りません。

また,他の相続人を候補者として,そのとおりに選任された場合(例えば,姉の後見人として弟が選任された場合など),利益が相反する(一方の相続人の不利益において他方の相続人の利益を得るような外観を有する)ため,特別代理人を家庭裁判所にさらに選任してもらって,選任された特別代理人と遺産分割協議を行う必要がある場合もあります。

このような遺産分割のための成年後見人選任の申立ての場合,成年後見人あるいは特別代理人としては,司法書士または弁護士が選任されるケースが多いです。

 

Q8、遺言が必要とされる主なケースには,どのようなものがありますか?

A8、主に次のようなケースでは,遺言を遺した方がよいでしょう。

・子供と両親がいないので(兄弟姉妹相続),妻に全ての財産を相続させたい場合

・相続人ではない孫や,身の回りの世話をしてくれた子の嫁に財産を譲りたい場合

・内縁の妻に財産を譲りたい場合

・法定相続分とは異なる配分で相続させたい場合

・同居している子に自宅を相続させたい場合

・子供たちがどの財産を相続するかで揉める可能性がある場合

・前妻との間に子供がいる場合

・アパートなど収益不動産を所有している場合

・個人事業を営んでいる場合

・推定相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合

・推定相続人の中に障がいを持つ方がいる場合

・推定相続人の中に音信不通の者がいる場合

・推定相続人がいない場合

・認知したい子がいる場合

・農地を一人に相続させたい場合

・特別受益の持ち戻しを回避したい場合

・寄附をしたい場合

・多数の金融機関に預貯金がある場合

・財産の一部をペットの世話を死ぬまでしてくれる方に譲りたい場合


Q9、不動産と預貯金を相続しましたが,忙しくて手続きをする時間がありません。 名義人変更について,法定期限はないと聞きましたが,このまま放置しておいてもよいものでしょうか?

A9、相続による名義変更の期限規定はありませんし,不動産の名義変更の場合,差し迫って支障が生じないことと,登録免許税の負担などもあって,名義をそのままにしている方がいるのも事実です。

しかし,状況の変化で,売却をしようとしても話がまとまらなくなってしまったり,高齢で判断能力が低下してしまったり,協議をする相続人が亡くなり,二次相続が発生したり,相続人の債権者が,法定相続登記を入れて債務者である相続人の持分について差押が入ったり,相続人が行方不明になるなど,次の代に先送りをすると,手続きが複雑化してしまって時間も費用も余計に掛かってしまいます。

次の時代に先送りせず,遺産をどのように分けるのか決定したら,早い段階で不動産の名義変更をすることをお勧めいたします。

なお,住宅ローンに関し,団体信用生命保険に加入していた場合,死亡によって,保険金が支払われ,住宅ローンとして不動産に設定した抵当権を抹消することができますが,この場合は,抵当権抹消登記に先だって,相続による所有権移転登記を行う必要があります。

 

Q10、遺言執行者は何をする人ですか?

A10、遺言執行者は,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有すると規定されており,遺言者の死亡後,遺言内容を実現してくれる人をいいます。

せっかく遺言を書いても,それが実現されなければ,書いた意味がありません。

必ずしも遺言で遺言執行者を定めておく必要はありませんが,遺言者は,遺言内容に従って不動産の名義変更や処分行為,預貯金の解約や有価証券等の処分,貸金庫の開扉,蔵置品の引取りなどを相続人に代わって実行してくれますが,遺言内容によっては,相続人間で利益が相反することも多く,手続きも専門的な部分もあることから,中立かつ公平な専門家を選任しておくことには大きなメリットがあります。

また,遺言認知,推定相続人の廃除及びその取消し,財団法人の設立は,遺言執行者のみが行えるものですので,この場合,遺言書で遺言執行者を定めておかなければ,裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。

このように,遺言執行者を予め決めておいた方が,遺言がより確実に実現できる可能性が高くなり,信任のおける専門家と相談しながら進めていくことをお勧めします。


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