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  3. 債務整理(総論編)はじめに~第1章

債務整理(総論編)はじめに~第1章

はじめに

多重債務に陥った相談者の多くは,精神的に追い詰められており,過酷な取り立てや執拗な電話での催促,社会的な偏見にさられながら,頭の片隅で夜逃げや自殺といったことも考えた末に最後の望みとして相談に訪れることを忘れてはならない。

相談者には,解決する方法が選択的にあること,将来の希望を持ってもらうことなど単に整理をする方法を提供するだけではなく,精神的サポートも必要不可欠の要素である(資料1)。

改正貸金業法等の完全施行

  • 既存貸付先のうち,約5割の利用者が総量規制の影響を受ける。
  • この1年間で,60%程度の貸金業者が既に審査を厳しくしたと回答。
  • 貸付残高規模5000億円を超える大規模貸金業者では約90%が審査を既に厳しくした。
  • 消費者向け無担保貸付の成約率は4件に3件は融資を断っている。
  • 量規制に導入により「大手貸金業者(貸付残高5000億円超)では既存貸付先の約半数以上に対し,与信見直しが行われる見込みである。
  • 過払い金請求者の請求時点における取引の状況は,原債務の支払いが滞っている延滞中の顧客からの請求が45%,正常な取引中の顧客からの請求が33%,既に取引が終了している完済・残高なしの従前の顧客からの請求が22%であり,半数以上が「延滞者」以外からの請求である。

 

第1章

1 選択できる手続き

  1. 時効援用
    債務者が支払いを何らかの理由で中止し,その数年後に多額の遅延損害金を付加して請求される場合がある。その請求書の中では,「連絡をくれれば,金○万円まで減額します。」という暗に和解を迫る。

    相談者に確認する事項
    1. 最終取引日
    2. 判決等,債務名義の有無
    3. 個人で営業している業者による貸付か
      1. 個人で営業している業者について判例は,商行為性が否定されて時効期間は10年とされている(学説では貸金業を行っている以上5年とする説もあるが確立していない。)。
      2. 信用金庫,信用協同組合は,商法上の商人に該当しない。
    4. 支払停止後に支払いをしたか。
      ※東京地判平7.7.26
      「債務者が,消滅時効完成後に欺瞞的方法を用いて債務者に一部弁済をすれば, もはや残債務はないものと誤信を生じせしめ,その結果債務者がその債務の一部弁済をした場合,債務者は,その債務について消滅時効の援用権を喪失しない。」
  2. 相続放棄
    1. 生命保険金
      生命保険金は,生命保険契約に基づき,被保険者の死亡という保険事故の発生を条件として支払われる金銭であり,相続との関係において,この生命保険金請求権が相続財産に含まれるのか,それとも,保険金の受取人として指定された者の固有財産となるのかが問題となる。
      • 保険契約者が自己を被保険者とし,受取人を特定の相続人を指定している場合この場合は指定されている者の固有の財産に属する。
      • 受取人が相続人とのみ指定されている場合(特定の氏名の表示なき場合)
        最判昭和40.2.2民集19巻1号1項(判タ175号103頁)
        養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されていたときは,特段の事情のない限り,右契約は,被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契」と解するのが相当であり,当該保険金請求者は,保険契約の効力発生と同時に,右相続人たるべき者の固有財産となり,被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。
    2. 死亡退職金
      国家公務員退職手当法は,死亡退職金の受給権者は「遺族」とされ,その範囲及び順位は,①配偶者(内縁も含む),②子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹で,職員の死亡時主としてその収入により生計を維持していた者,③その職員の死亡当時主としてその収入により生計を維持していた親族などと定められている。国家公務員共済組合法及び地方公務員についても同様の定めがある。
      この場合,民法に定める規定と異なり,生計を同一にしていた遺族の生活を保障する趣旨であることから,受給権者である遺族の固有の権利であると解している。
      • 受給権者が法人の内部規程で定められている場合
        社内規程には,①労働基準法施行規則42条ないし45条(国家公務員退職手当法と同様な規定)を準用する旨の定めをするもの,②遺族に支給すると定めているもの,③相続人に支給すると定めているものがあるが,いずれも,受給権者たる固有の財産となる(ただし,相続人に支給するとの定めの場合は,学説では,受給権者たる相続人の固有の権利であるとする説,相続財産に属し,受給権者とされた相続人はただ相続人の代表者として受領するに過ぎないとする説がある。)。
      • 受給権者が法人の社内規程で定まっていない場合
        最近の傾向として,死亡退職金を受給権者固有の権利であるとする範囲を拡大しつつあるところ,現在明確には定まっていないが,受給権者固有の権利であると解すべきであると思われる。
    3. 遺族給付金
      遺族給付とは,社会保障制度の特別法によって,死者と一定の関係にある親族に対してなされる給付を総称し,損失補償,遺族年金,弔慰金,葬祭料等が含まれる。これについても,遺族固有の権利と解すべきとされている。
    4. 3か月の熟慮期間
      最判昭59.4.27
      第1審で貸金の連帯保証債務の敗訴判決を受けた債務者が死亡。この相続人が,被相続人の死亡の事実自体は死亡日ないしはその後間もなく知りえたが,被相続人と没交渉であったことから第1審判決も知らず,また,被相続人の資産は全くないと誤信して相続についての手続きをとらずに放置。被相続人死亡から1年経過後に第1審判決の送達を受けた事案。
      → 相続するべき財産が存在しないと信じ,かつ,そう信じるについて相続人側に相当な理由があった場合には,相続放棄をするかどうかの必要性すら思い至らないこともあるから,このような場合には,3か月の熟慮期間が進行するのは,相続財産の全部または一部の存在を認識したときまたはこれを認識しうべき時から起算する。
      ※次順位の相続人にも連絡
      ※団体信用生命保険
  3. 和解交渉(任意整理)
  4. 特定調停
  5. 過払請求(訴訟)
  6. 破産
  7. 民事再生

2 相談のポイント

  1. 負債の状況
  2. 収入の見込み額
  3. 財産の状況
  4. 債務者の置かれた状況
  5. 債務者の希望
  6. 家計の状況

3 相談者から聴取すべき事項

  1. 負債の状況
    各債権者ごとに,「最初の借入年月日」「支払状況」「残債務額」「保証人または担保の有無」を確認する。
    (契約書,支払伝票,利用明細書等)
    サラ金,信販会社,商工ローン,ヤミ金,銀行の区別
  2. 相談者の収入の状況
    手取り収入,同居家族の収入,児童手当,児童扶養手当,年金,生活保護などの公的扶助があるかも確認する。
    将来の収入の見込みについても確認しておく。(給与明細書,源泉徴収票,課税証明書等)
  3. 財産の状況
    預貯金通帳,退職金見込み額の証明書,生命保険(解約返戻金),社内積立預金,車検証,不動産評価額証明書,登記事項証明書等により確認。
    また給与明細書の控除科目において,会社からの借入や財形貯蓄,社内保険等が判明する場合あり。
  4. 債務者の置かれた状況
    借入原因を尋ね,生活費のための借入れかギャンブルか,その他(無理な住宅ローンの返済や事業の失敗か,あるいは名義貸しか等),借金原因の根本原因を探求する。
  5. 債務者の希望
    債務者が,各手続きのメリット・デメリットを説明したうえで,どの手続きを選択をするかの自由を与える。
  6. 家計の状況
    毎月可能な可処分所得を算出する。家計の状況はできるだけ領収書等に基づいて記載させ,領収書のない出費にも注意を図る。家計支出で,家族内で借金をしている者がいればその弁済額についても支出として計上し,この者にも整理を検討してもらう。
  7. その他
    借金以外の滞納税金や滞納家賃の把握。サラ金業者ではない,個人(知人や親類等から)の借入状況と負債総額。本人の債務を整理するための親族等の協力者の有無(しかし例え親族等の余力がある者がいたとしてもその強要はできない)。

4 相談者に注意してもらう点

  1. 破産,民事再生を選択した場合には,官報に公告されるためヤミ金業者等がDM等によって融資の勧誘があることを説明する(名簿屋の存在)。総量規制問題。
  2. 新たな借金の禁止
  3. 債権者からの法的な請求がなされている場合の対処
    支払督促に対する異議の申立て,答弁書の提出,上訴,請求異議の訴え,差押禁止債権の範囲の変更申立て,調停前の措置命令の申立て,破産・再生開始決定後の強制執行中断等(破産法249条1項,再生法39条1項)の手続きが必要となる。
  4. 実務家か整理を行う場合,本人が特定調停を行う場合,信用情報機関に登録されることも伝える必要がある。
  5. 自動引落し口座の解約等
    債権者平等の原則により,整理後一部債権者のみに対する弁済は控えるべきであるため,引落しの中止依頼,口座の解約等を行っておく(破産の場合には偏頗弁済となり得る。)。
  6. 給与・年金振込口座の開設銀行等からの借入れがある場合
    銀行側は預金債務との相殺規定により相殺の対象となってしまう可能性があるため,勤務先に給与振込口座の変更等を依頼する。
    ただし,裁判所への申立てまたは支払停止を債権者が知った後に,給与・年金等が口座に振り込みまれた場合には,相殺制限の規定により,振り込まれた給与・年金等の払戻しを受けることは可能と思われる(破産法71条,再生法93条2項,札幌地判平成6.7.18消費者法ニュース22号31頁)。しかし,この場合には額の確定のため口座が凍結される可能性がある。
    クレジット等の引き落としが給与振込口座と同一の場合には,意に反して給与が振り込まれた段階でクレジット等の引き落としがかかる場合があるのでこれにも注意を要する。
  7. 保証人,物的担保,公正証書,所有権留保物件がある場合の対処
  8. 家族への影響 

 

5 相談者の今後の将来設計

  • 自動車の車検
  • アパートの更新料
  • 子供の進学
  • 病気
  • 冠婚葬祭
  • 出産
  • 友人,知人への返済
  • 滞納家賃
  • 公租公課 など

 

債務整理(総論編)第2章に続きます。

 

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