個人民事再生の詳細(その2)

個人民事再生の詳細(その1)の続きです。

5  破産手続きとの関係について

債務者がこれらの手続の申立てをするか,自己破産の申立てをするかの先後関係については法律上の制限はなく,この法律に規定がないのは,何れの手続きも自由に選択できる趣旨になっています。

前述のとおり,個人債務者再生では将来の収入の一部が弁済原資とされ,かつそれは破産の場合の清算価値を下回らないものとされているので,破産免責を受けるほうが債務者にとって有利であるかに見えます。

しかし,将来収入の一部を弁済することになってもそれと引換えに破産者となることを免れるメリットもありますし,住宅を手放さないで債務の整理ができるという利点,さらにハードシップ免責の制度もあります。

そのため、破産者になると資格を失う債務者や自宅だけは維持したいという債務者にとっては破産手続きよりも利用しやすいといえます。

6 個人債務者再生と,他の手続との違い

(1) 手続選択面における違い

①個人債務者再生と通常の民事再生との関係

個人債務者再生は,通常の民事再生とともに「再生手続」という「再建型の倒産処理手続」の一つとして,民事再生法の一部となります。

これは,開始手続については,共通の手続が用意され,開始決定において「通常の民事再生手続」「小規模個人再生手続」「給与所得者等再生手続」という3つの種類の民事再生手続についていずれかを開始するかが決定されるという構造になっています。

こ の3つの再生手続に関してその種類の選択は,債務者のみが行えます(221条・239条)。再生債務者が再生手続の開始を申立てた場合には,債務者は開始 される再生手続の種類に優先順位をつけることができますが,債務者が手続開始の申立てをした場合には,それに加えて,債務者は開始される再生手続の種類を 限定することもできます。

②個人債務者は,その利用資格を充たす限り,小規模個人再生,給与所得者等再生と破産免責のいずれかによるかを選択できます。

これは明文の規定はありませんが,特に制限を設けていないのはその趣旨です。

(2)相違について

①個人債務者再生と通常の民事再生との相違

個人債務者は,通常の民事再生に比べて,いわば個人債務者限定の再建手続といえるもので,利用者を個人の債務者に限定してそれにふさわしいように手続を簡易化・省力化・合理化し費用もかからないようにしたものといえます。

②個人債務者再生と破産手続きとの相違

 小規模個人再生給与所得者等再生通常民事再生破産免責
債権者申立 不可 不可 >可
債権者の計画案提出権 なし なし あり(163条)  
手続の追行 債務者中心 債務者中心 債務者中心だが原則監督委員の監督あり 裁判所または破産管財人
要件 支払不能のおそれ 支払不能のおそれ 支払不能のおそれ等(個人の場合) 支払不能
債務額の要件 住宅ローンを除き3000万円まで 住宅ローンを除き3000万円まで なし なし
債権者同意の要否 債権者の半数以上,債権額の過半数の不同意がないこと 不要 債権者の過半数及び債権額の半数以上の積極的同意 不要
資格制限 なし なし なし あり
再申立て 認可から10年間不可 免責確定後10年間は不許可事由
支払に必要性 あり あり あり 破産宣告時の資産の範囲で有無が決定
手続中の執行 不可 不可 不可 管財事件では不可だが同廃は可
自宅の維持 不可
確定力・執行力 なし なし 債権者にあり 債権者にあり
不許可要件 なし なし なし 限定列挙であり

 

個人民事再生の詳細(その3)に続きます。

 

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