個人民事再生の詳細(その4)

個人民事再生の詳細(その3)の続きです。

再生債権とは何か?

  1. 「再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」(84条1項)が,原則として再生債権となります。
    1. 再生手続開始前の原因に基づくこと
    2. 再生債務者に対しての人的請求権であること(物権的請求権である所有権に基づく再生債務者に対する物の返還請求権などは再生債権ではない)
    3. 再生債務者に対する財産的請求権であること(再生債務者の一般財産により弁済を受けることができるものでなければならないので,離婚請求権などの親族法上の請求権は再生債権ではない)
  2. 再生手続開始後の原因に基づいて発生した請求権でも例外的に再生債権となるものがある。
    1. 再生手続開始後の利息や遅延損害金の請求権
    2. 再生手続後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権(再生債務者が再生手続開始前に行った請負工事を,再生手続開始後に行った工事が失敗し物に損害を与えた場合における,注文者の再生債務者に対する損害賠償請求権等)
    3. 再生手続参加の費用の請求権(再生手続開始後に再生債務者が裁判所に納める各種再生手続のための費用など)
  3. 再生債権の効力
     再生手続が始まった後は,原則として,再生計画に基づいた弁済しか行うことができず,計画に定めていない弁済や弁済の受領その他債権を消滅させる行為(免除は除く)はできません(85条1項)。

共益債権とは?

債権者の共同の利益のために随時弁済をする必要性のある債権であり,民事再生法上の手続を経ることなく,再生計画における権利内容の変更や弁済条件の変更も受けず,再生債権に先立って(優先的に)随時弁済を受けることができる債権のことをいう。

  1. 再生債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(債権者が再生手続開始の申立てをした申立費用や保全処分の費用等)
  2. 再生手続開始後の再生債務者の業務,生活並びに財産の管理及び処分に関する費用の請求権(再生債務者の経済的再生に必要不可欠な再生債務者の業務に関する原材料の仕入れ費用や,従業員の給料,商品の保管費用,店舗の賃料や生活に必要な電気料,水道料など)
  3. 再生計画の遂行に関する費用の請求権。ただし,再生手続開始後に生じたものを除く(再生計画に従って再生債権を弁済をするための資金を調達するために必要な費用)
  4. 個人再生委員の費用の前払い及び裁判所が定めた報酬請求権
  5. 再生債務者の財産に関し再生債務者が再生手続開始後にした資金の借入その他の行為によって生じた請求権(その他としては,再生債務者が再生手続開始後に売買や請負などの契約をすることによって負担する債務や,再生債務者が再生手続開始後に不法行為をした場合における損害賠償請求権が考えられる)
  6. 事務管理または不当利得により再生手続開始後に再生債務者に対して生じた請求権
  7. その他再生債務者のために支出すべきやむを得ない費用の請求権で,再生手続開始後の発生したもの(冠婚葬祭費等)

これらが119条に規定する一般的な共益債権の内容ですが,法で個別に規定されているものとして,

  1. 再生手続開始決定により中止または効力を失った破産,強制執行等の手続のために再生債務者に対して生じた債権及びその手続に関する再生債務者に対する費用請求権,手続が続行された場合の費用請求権(39条3項)
  2. 双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始当時共にまだその履行を完了していないときに,債務の履行が選択された場合の相手方が有する請求権(49条4項)
    (相手方が再生債務者に商品を販売する契約を締結したが,未だ商品の引渡しと代金の支払いがなされていない場合,再生手続開始後は再生債務者はその選択に従って契約を解除するか,再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができ(49条1項),また,相手方は,再生債務者に対し,相当の期間を定め,その期間内に契約を解除するか債務の履行を請求するかの確答すべき旨を催告することができる(49条2項)。)
  3. 再生債務者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方が再生手続開始の申立て後再生手続開始前にした給付に係る請求権(50条2項)
    (継続的な商品仕入れ代金,電気料金,ガス料金,電話料金等の生活や事業に不可欠なもので,再生手続開始申立てまでに行った給付に係る請求権は再生債権とされるが,再生手続開始の申立て後再生手続開始までに行った給付に係る請求権は共益債権とされる。一定期間ごとに債権額を算定する継続的給付については,申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権は共益債権とされ(50条2項),再生手続開始後に行った給付に係る請求権は,それが再生債務者の業務,生活,財産の管理及び処分に関する費用であれば共益債権となる。)
  4. 再生債務者が再生手続開始の申立て後再生手続開始前に資金の借入れ,原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことのできない行為をする場合で,裁判所がその行為の相手方の請求権を共益債権とする旨の許可したもの(120条)

一般優先債権とは?

民法や商法等により,一般の先取特権その他一般の優先権のある債権で共益債権以外のものを言います。

これも再生手続によることなく随時弁済を受けることができます。

  1. 民法306条から310条までの先取特権
  2. 会社使用人の先取特権
  3. 租税債権及びその他国税徴収法の例により徴収することのできる請求権や各種社会保険料等の請求権

開始後債権とは?

再生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって,共益債権,一般優先債権,再生債権でないものを指します。

具体的には,再生債務者が業務や生活に関係なく行った不法行為を行った際の損害賠償請求権や,再生手続開始後に業務や生活に関係なく借り入れた金銭や保証債務に関する請求権。

再生手続が開始されたときから再生計画で定められた弁済期間が満了するとき(再生計画認可決定が確定する前に再生手続が終了した場合は,その終了したとき,その期間満了前に再生計画に基づく弁済が完了したときまたは再生計画が取り消された場合にあっては,弁済が完了したときまたは再生計画が取り消されたとき)までの間は,弁済をし,弁済を受け,その他これを消滅させる行為(免除を除く)をすることができず,この間は,強制執行や仮差押,仮処分の申立てを行うこともできません(123条)。

別除権とは?

再生債務者の財産の上に存する特別の先取特権,質権,抵当権または商事留置権者は,その目的である財産について別除権を有しています(53条1項)。これらは,再生手続拘束されることなく,抵当権の実行等を行うことができます。

なお,非典型担保物権である譲渡担保や所有権留保権者も別除権者として考えられます。

例外的に,別除権の目的物が再生債務者の事業継続に欠くことができないものである場合,再生債務者は裁判所に対して当該財産の価格に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産上に存する全ての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる規定になっていますが,小規模な個人事業主を想定している個人再生では,余程のことがない限り,利用されるケースは稀でしょう(事業再建に向けてのスポンサーが現れるなどしなければ困難と思われます)。

(別除権付再生計画案)

3 再生債権額が確定していない再生債権に対する措置

別除権者の再生債権について

別除権が行使されていないものについては、別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分(以下「不足額」という。)が確定したときに、前記1、2の定めを適用する。なお、再生債務者が別除権者から不足額が確定した旨の通知を受けた日に既に弁済期が到来している分割金については、当該通知を受けた日から2週間以内に支払う。


個人民事再生の詳細(その5)に続きます。

 

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